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*「とりあえず奴を〜」の幕間にあった遣り取り。 |
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30M先には烈。 しかしその前にはエーリッヒが改造銃片手に立ち塞がっています。 助けはありません。手の中には無線機。 誰に助けを求めますか? |
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++HELP ME!!〜的外れな男〜++
「エッジ、応答しろ!」 連絡先は自チームのNo.2、自称エースを誇る男だ。 『Hi!どうしたんだ、リーダー?デートの結果報告にはまだ早すぎるんじゃないか?』 場違いな無駄に暢気すぎる声が腹立たしい。 「今すぐありったけの武器を持って応戦に来い!」 『はっ?リーダー??今日は愛しのレツ・セイバをデートに誘いにいったんだよな?』 確認されて思わず頷く。 そうだ、確かにそのはずだった。 『なのに何でいきなりそうなるんだ?』 そんなことは自分が聞きたい。 「とにかく緊急事態だ。今ここは戦場と化している」 できうる限りの緊迫した声音でブレットは真実を語った。 『戦場?はっはーん、わかったぞ?さてはまた痴話喧嘩だな!けど残念ながら愛と言う名の戦場において万能の武器なんて存在しないぜ、リーダー☆』 「誰がそんな馬鹿みたいなアドバイスを求めたっ?!」 しかし不幸なことに、平和な寄宿舎にいるエッジにはその空気がうまく伝わることはなかった。 『とにかくさっさと仲直りしろよ!あっ、マルガレータだ!おーい、暇ならオレと一緒にお茶でもどーう?』 全く無意味な励ましと共にエッジは早々に無線を下ろしたのか、声が徐々に遠のいていった。 「誰だ、こいつをNo.2なんて言った奴は…」 決めたのはアストロノーツ養成所だが、認めたのは自分だ。 ブレットは今それを心底後悔した。 マルガレータに近付くんじゃないわよ! バシィィィィッッ ジャ、ジャネット…君のセンスマッシュは今日も輝いてる…ぜ、ガクッ。 無線からは未だ微かに音声が漏れ聞こえていたが、それはブレットにとって全くどうでもいいことだった。 こいつは駄目だ、と判断したブレットは即座に無線のチャンネルを切り替えた。 ++HELP ME!!〜恋する乙女〜++ 「ジョー!」 アストロレンジャーズ紅一点。同じく片思い中の彼女は、ブレットの恋愛に関してチーム内で一番協力的である。 きっと彼女ならば「しょうがないわね」と文句をいいながらも、助けとなってくれるはずだ! 『あら、ブレット?ちょうどよかったわ。連絡しようと思ってたの!今リョウのテントに遊びに来てるんだけど!』 「そうか。よかったな」 というかそれは朝から何度も聞いているので知っている。 本当に、何度も。 ビクトリーズの練習がないという情報も、元はと言えばジョーがリョウの家を訪ねるために、Jを経由して得たものだ。 取り敢えず適当に相槌を打ちながら自分の用件を伝えようと試みる。 「それでオレの方の用件なんだが……」 『それでね!すごくいいことがあったの!夕食をごちそうしてくれるっていうのよ!』 ブレットの言葉をジョーが興奮気味遮った。 「今な……」 『誘ってくれたのはジローマルなんだけど!リョウもいいって言ってくれたの!』 「エーリッヒが……」 『今も三人できのこ狩りをしてたの!リョウすっごく詳しいのよ!私にはどう見ても毒キノコとの違いなんてわからないのに!リョウは一瞬で見分けちゃうの!』 「改造銃で……」 『しかもね!帰りはリョウが自分から送るって言ってくれたのよ!夜の女の一人歩きは危険だ、だって!キャーッ!』 「こっちを狙って……」 『というわけで今日は夕飯いらないから!』 駄目だ。 全く聞いてない。 普段ならそっとしておいてやりたいところだが、今はこちらも命の危機だ。 「ジョー、楽しんでいるところ悪いんだが今からこっちに……」 『何ですって……?』 「ジョ、ジョー?」 今何かどす黒い声が…… 『今……何か言ったかしら?』 「あぁっと…できたら応戦に……」 『まさか。くだらないことで呼び出すつもりじゃあないわよね……リーダー?』 タラリ。 今、まさに(くだらなくはないが)呼び出そうとしていたブレットは、頬に一滴の冷汗が流れるのを感じた。 言わなくてよかった。 下手をしたら、また別に新たな戦場が生まれるところだった。 触らぬ神に祟りなし。 最近覚えた日本語の諺に従い、ブレットはジョーへの要請を諦めた。 「い、いや何でもない…楽しんで来いよ、ジョー……」 『ありがと!ブレットもレツとうまくやりなさいよ!』 うまくやりたかったさ…… ブレットは少々儚くなりながらも、無線のチャンネルを切り替えた。 ++HELP ME!!〜用心深い少年〜++ 「ミラー、頼む!助けてくれ!」 あの小さい身体ではあまり戦力としては期待できないが、小回りは利くし、何より今は何でもいいから(ヒドイ)味方と武器がほしかった。 『嫌だ』 しかし端的に語られた返答は、完全なる拒否を示すものだった。 「何故だ!ミラー?!」 基本リーダーとしてのブレットに、最も信頼を寄せているミラーなら真剣に頼めば力を貸してくれるだろう、と期待していただけに断られたダメージは大きかった。 そんなミラーは断った理由についてこう語った。 『だって何か嫌な予感がする。今リーダー、ドイツのリーダーと一緒なんじゃないか?』 「何故そう思う?」 ドンピシャリなミラーの指摘に内心冷汗を垂らしながらも、ブレットはそれを悟られないよう動揺を心の奥底に沈め、明言はせずにあくまで平静を装って尋ね返した。 『だって今日の昼、意気揚々と門の外に出て行ったリーダーの後を、アイゼンヴォルフのリーダーがつけていったから』 ミラーは寄宿舎の廊下の窓から、偶然その異様な光景を見かけていたのだった。 「って何故それをオレに知らせてくれなかったんだ!」 もし前もってそれを知らされていれば、一直線に奴をレツの前に導くような真似はしなくてすんだはずだ! 『だってリーダー、ドイツの連中とは相性悪いみたいだし。言っても言わなくても面倒ごとになるのは目に見えてるじゃないか』 鋭い。 『オレは巻き込まれるのは嫌だ』 自分の身が一番かわいい。 チイコ・カップのあの日、ミラーは君子危うきに近寄らずという言葉を知った。 ごめん、リーダー。オレまだカリキュラム残ってるから。とミラーはそのまま無線の電源を切ってしまった。 今度から期限に間に合わなくても絶対手伝わんぞ。 意外と薄情なミラーにブレットは新たな決意を固めると、無線のチャンネルを切り替えた。 ++HELP ME!!〜趣味に走る青年〜++ 「アストロレンジャーズ、唯一の良心!頼む、ハマー!」 頼まれたらNOとは言えない、でかい図体に反し、意外と気が小さいハマーDに懇親の希望を込めて電波を送る。 『ザ―――――――』 「あれ?間違ったか?」 手の中の無線機のメインダイアルを確認しても間違いなくハマーDの設定周波数だ。 「まさか壊れたのか?」 しかしこれはNASAから支給された特別性の品である。今日の朝も点検したばかりだし、そう簡単に壊れるはずはない。 「????一体どういうことなんだ、ハマー!」 その頃問題のハマーDは。 「す、素晴らしい……」 人形浄瑠璃・心中物『天の網島』の鑑賞真っ最中であった。 場面は遊女小春と治兵衛の心中シーン。まさにクライマックス。 「やはり日本の伝統芸能は奥が深い……」 劇場内では携帯の電源は切りましょう(もちろん無線も)。 ハマーDはそれを最低限のマナーとして忠実に守っていた。 真面目なハマーDが電源を切っているなどとは思いもしないブレットは、ひたすら頭を悩ませ無線機に呼びかけ続けた。 「ハマァァァァアッァァァアッッ!!!」 喰い入るように人形の動きを見つめ、必死で語りの声に耳を傾ける彼に、ブレットの魂の叫びなど届く余地はなかった。 叫び続け力尽きたブレットは、肩を落とし、ついに仲間への救援を諦めた。 そして彼は孤軍奮闘、力の限りエーリッヒに立ち向かった。 その結末は、もう言うまでもない。 |
| end. |
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拍手4,5,6,7再録。アストロレンジャーズは、きっと仲良しです…………………………たぶん。今回はタイミングが悪かったのです……………………………たぶん。 |