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「アヒルの村へ行きたい」 事の発端はシュラの無邪気なこの一言。 そして恐怖はダッククランに舞い降りた。 | |
| ++アヒル☆パニック++
「あいつら、どこ行ったんだ?」 解放戦争後、夜逃げ同然にシュラを連れ出してから早一年半。 すったもんだの末、ついこの間、シュラの知り合いらしいアキとかいう青年と合流し、以来何の因果か歴代天魁星三人行動を共ににすることになった。 一応「シュラの紋章を制御する方法を探す」という目的はあるものの、そう簡単に見つかるはずもなく、とりあえず知識の宝庫であるハルモニアへ向かいながら気ままな三人旅を楽しんでいた。 今回もたまたま会話の中で、シュラがエンの過去の仲間にいたアヒルの話を始め、何気なくその故郷が近くにあるから寄ってみるか、という流れになり、このしゃべるアヒルが大量に暮らしているダッククランへとやって来た。 と、そこまではよかったのだが、村に近づき、遠目にアヒルの姿を視界に捉えたとたん、シュラは「アヒル!」と叫びながらマッハで村の中へと突進していったのだ。 あまりの勢いに思わず二人が棒立ちになっている間に、シュラの姿はみるみる内に遠ざかり、やがて見えなくなった。 正気に返った二人も慌てて、シュラを追って村に入り、探し始めたものの、しばらくしてエンが後ろを振り返ると、そこにアキの姿は無かった。 やべ、忘れてた…… そう、エンは失念していた。新しく旅の連れとなったアキ青年は、自分より遥かに年をくっているにもかかわらず、ものすごく、とんでもない 方向音痴だということを まだ合流してすぐの頃も、野宿の際に食料を探しにいかせたわけだが、アキはそのまま帰ってこなかった。 それから三日後に『おいしいご飯を作る美形のアルバイター』の噂を耳にし、駆けつけると、目的地とは全くかけ離れた村で暢気に働くアキの姿を発見した。 つい最近までアキと出会った頃の記憶を失くしていたため、いまだ細かなところがあやふやになっていたシュラも忘れていたアキの最大の欠点をようやく思い出した。 以来、アキに単独行動させることはなくなった。 わけだが、今回ばかりは油断した。まさか自ら逸れてしまうとは。 まぁ、でもいなくなってしまったものは仕方がない。 向こうもシュラを探しているわけだし、さすがに村の外へ行くことはないだろう。 というわけで冒頭に至る。 「ま、アヒルの中に人間が混じってりゃぁいやでも目立つし、すぐ見つかるだろ」 突然で慌てたりしたが、基本常識人な二人である。日頃も問題を起こすのは大抵エンであるわけだから、あの二人を放置したところでどうってことはない。 暢気にそんなことを考えながら村中を闊歩していたエンの視界に黒っぽい色が過ぎった。 お、早速見つかったじゃねぇか。 そこにいたのはいつも黒系統の服装で固めたアキ。意外にも近くに留まっていたようだ。 しかし、あんなとこに突っ立って何してやがんだ? 広場の入り口付近でじっと何かを見つめている。シュラを見つけたのかと思えば、その視線の先にあるのはただのアヒル達の集まり。 こいつもアヒルに興味あんのか? 「おい、何見てんだ?」 声をかければ存外あっさりと振り向いた。 「ああ、エン。見てのとおりアヒルを見てたんです」 「?面白いのか?」 「面白いといいますか、夢が膨らむばかりですね」 ?夢が、膨らむ??アヒルを見て?何でだ? 理解不能だ。シュラもそうだが、アキも時々エンにはよくわからない思考をする。 「よくわからねぇが…興味あんなら、見てばっかいねぇで話しかけりゃぁいいんじゃねぇの?」 アキは少し考えた後、 「…そうですね、こういうことは当人が一番わかってるでしょうし」 そう言ってアヒルの群れに近づいて行くアキの後姿に、一体何を聞くのか気になったエンもその後について行った。 「すいません、ちょっとよろしいですか?」 丁寧な物腰に、優しげな笑顔。元々が友好的な種族であるアヒル達はなんの警戒もなく、それに応じた。 「何だい?」 そしてアキが笑顔で一言 「初めまして、とてもおいしそうですね」 ぴしり。 空気が凍る。そしてその場にいる者たちの視線がいっせいにその発言者へと向かう。 しかし彼は穏やかな笑顔のままで……聞き間違いかと思いかけた皆の頭上から第二派が落とされた。 「一番おいしい箇所はどこですか?やはりたっぷり油の乗った腿肉、それともあっさりとした柔らかな胸肉ですか?」 「ひいいいいいいっ!!」 聞きたいことってのはそれか―――っっ! っつか聞くな、そんなもんっ! エンの心の叫びもむなしく、アキは続ける。 「調理法はやはり丸焼きで?」 「おま、黙れ――――っっ!!!」 珍しくもアヒル達の心情を慮るという、優しさを発揮したエンであったが、無常にも被害は別の場所からもやって来た。 「ギャ――――――!!」 「今度は何だ――――っ?!」 「可愛い。しっぽが、ふさふさ」 こ、この声は―――― エンは振り向きたくなかった。けれど勇気を出して振り返った。そこには。 「ぐええええええええええええっっ」 予想に違わず、ものすごい力で抱きしめ、いや締め付けられているアヒルの姿とその犯人。そしてその後ろには、既に締められて力尽きた屍が累々と続いていた。 「やめんか――――っっ!」 基本常識人だと?放って置いても問題無いだと? 何故そんなことを思ったのだろうか?自分は。自分も大概だとは思うが、ここまでひどくはない。 エンは一瞬このまま奴らをおいて一人旅に戻ろうかと真剣に思った。 しかしエンが現実逃避している間にも被害はどんどん広がっている。 | |
| 「でもローストチキンも」 | |
| 「くちばしのフォルムが」 | |
| 「から揚げもいいですね」 | |
| 「膝枕に」 | |
| 「バンバンジーも捨てがたい」 | |
| 「ふかふか」 | |
| 阿鼻叫喚。 アヒル達は逃げ惑い、しかし次々と毒牙にかかって倒れて行く。 その図はまさにアヒルパニック アヒル達、大パニック しかし神は彼らを見捨てなかった。 | |
| 仮にもかつて共に戦った仲間の村である。このまま大量虐殺じみた拷問にさらすわけにはいかない。 エンは我に返ると現況二人の首根っこをとっ捕まえた。 | |
| 「まだ一匹も捕まえてませんよ」 | |
| 「そうだよ」 | |
| 「うるさいわっ!!食うのも飼うのも禁止だ!!!!」 その言葉を最後に嵐は去って行った。 しかし三人は知らない。 最後にエンの放った率直な一言が とどめのダメージとなったことを | |
| end. | |
初短編です。それがこんなんでいいんでしょうか……。坊も4主もほとんどしゃべってません。壊れてるし。おかしいな。これではエンさんが常識人に見えるよ。 後、下にちょこっとですがおまけが付いてます。よろしければ反転してどうぞ。 おまけ ヒューゴ君五歳。今日も悪戯が見つかってジョー軍曹の怒号が飛ぶ。 「こら、ヒューゴ!!」 「おこってもこわくないもんね―っ!」 「そんなことを言ってられるのも今のうちだぞ」 「?どういうこと?」 「ダッククランではな、悪戯ばかりする悪い子のところには怖い鬼がやってくる……」 「え……?」 「もし捕まれば……」 「どうなっちゃうの……?」 「首を絞められ、丸焼きだ」 「こわっっ!」 三人が起こした恐怖の事件は、多少脚色されて何故か子供のしつけ向けの怪談話として語り継がれたのだった。 ちなみにその日からヒューゴ少年は素直でいい子になったそうな。 | |