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大会から三週間。 ビクトリーズのリビングでは、古参の三人による、次の試合に向けてのミーティングが行われていた。 「次の相手は?」 「アメリカでゲス」 「アメリカ……」 あの気に食わないアイツがいた国。 「あそこにだけは絶対負けられねぇ」 拳を握り締める現リーダー、豪。 しかしそんな静かな空気は簡単に遮られた。 「なぁぁにをシリアスぶってるダスか!!このウンコ野郎!!!」 「アメリカでなくてももう絶対負けられないでゲスよ!!ワテらはもう二連敗、二連敗なんでゲスよ――っっ!!これまでの戦績から見れば最低の滑り出しでゲス!!!」 「こんな成績じゃあ兄ちゃんに顔向けできないダス!」 「本当でゲス!J君や烈君にもとてもじゃないでゲスが申し訳がたたんでゲス!」 「〜っっわかってる!!とりぜずあの二人に、チームランニングの必要性を教え込めばいいんだろうが!!」 …………………… 「何だよ?」 「……豪君からそんな台詞を聞ける日が来ようとは」 「熱でもあるんダスか」 「うるせ―――っっ!!」 三人の喚き声が木霊して終了、というのがパターンと化している。 それがミーティングと言えるのかどうかはかなり謎だ。 「とにかく!明日学校終わったら、早速特訓だ!!わかったらさっさと寝ろ――っっ!!」 もう絶対負けられねえんだ。 |
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++距離4〜豪ver〜++
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学校から返って、割り振られた貴重な練習時間。 いつもなら真っ先にマシンを走らせる豪は、珍しくも少し離れたところで四人の走りをじっと見つめていた。 「行っけ――!!」 「そこだ!抜け!!」 二人が競り合う。 「外に出すぎダスよ!!」 コーナーで外に飛び出しそうになっている二人のマシンを二郎丸が得意の壁走りで押さえにかかる。 「二人ともライン取りが接近しすぎでゲス!!そんなんじゃ次がクラッシュす」 今度は内に寄りすぎた二人の軌道を修正しようと、藤吉のマシンがコーナーの内側から揺さぶりをかけたその瞬間。 「「「あー!!!」」」 「ほら、だから言ったでゲス」 兄弟のマシンは仲良く揃って、吹っ飛んだ。 「今回は途中まではうまく行ってたんだけどな」 ブレイジングマックス・ナックルブレイカーZ−1。 そして二郎丸のジローマルSP4。 自分より速いとは思わないが、三台ともかつての自分達に勝るとも劣らないマシンだ。 オーストラリアもフランスも決して遅くはなかったが、特別速かったわけでもない。 マシンの性能から考えれば、むしろ勝てない勝負じゃなかったはずなのに。 「なんっでうまくいかねーのかなー」 「悩んでるね、豪君」 「土屋博士」 そろそろ付き合いも長いミニ四駆の博士であり、引き続き監督でもある土屋に、豪は相談を持ちかけた。 「ふーむ、豪樹君はのびのび、烈矢君は鋭い感じの走りで全然違うけど、意外とコース取りは似てるんだね」 「だからクラッシュして困るんだって」 「二郎丸君はリョウ君に似ているけど、彼より力強い走りをするね」 「そっかな?よくわかんねーけど。でも確かにリョウよりスピードは劣るけど、その分安定してるかもしんねー」 「ふむ、なるほど」 四人の走りが再開される。 しばらく黙って、走りに見入っていた土屋博士が突然ポツリと呟いた。 「豪君」 「何?」 「GPチップを外してみる気はないかい?」 「へ?」 一瞬、何を言われたのかわからなかった。 「これは実は前々から少し考えていたことなんだけれどね」 提案の一つだと思って取り合えず聞いてみて欲しい。 そう前置きをして、土屋博士はおれが全く考えていなかった予想外の提案とやらを話し始めた。 「今豪君、藤吉君の二人がつけているGPチップは第一回と第二回に使用していたものと同じだろう?」 「そーだよ。学習したGPチップのが色んな状況に対応できるって博士が言ったんじゃねーか」 「ああ、そうなんだけどね。けれどそれが今回のチームランニングがうまくいかない原因かもしれないんだ」 「ええ?どういうことだよ、博士」 「君達二人は随分長い間、そのGPチップを使用してきた。つまり、以前のメンバーでのチームランニングが染み込んでしまっているんだ」 何を今更。 そんなことはわかりきっている。 だからこそ、終盤になればなるほど、自分達の走りは洗練され、マシンの特性を損なうことなくチームとしてのまとまりも生まれていたのだから。 「それが、何か悪いのか?おれ達だって何度かマシンを改良したりしたけど、そん時は博士、何も言わなかったじゃねーか」 「うーん、悪いというか……皆のマシンは変わったとは言っても、特性自体は変わっていなかったからね。大した問題もなく、それでもよかったんだろうが、今はレーサーとマシンそのものが違うわけだから」 「よくわかんねえ。はっきり言ってくれよ」 「じゃあはっきり言うけど、今のGPチップでは新しいチームに対応できない。そのせいでチームランニングを妨げている」 え? 豪にとってはそれこそ寝耳に水だった。 色々な経験を積んでいるから、どんな状況にも対応できると思い込んでいた。 まさかその経験が。 兄達と共に走り続けてきたことが、逆に枷になっている? 「でもクラッシュしてるのは主に豪樹と烈矢が原因で」 「はっきり言って彼らが経験不足なのは否めない。でも基本それは回数をこなせば解決できる問題なんだ。実際彼ら三人だけで走らせると、コースアウト率が減っている。それが四人で率は少し上昇する。五人だと完璧に高いとしか言えない」 「台数が増えるとクラッシュしやすくなるのは当然だろ?!」 「それでもこの数値の差は異常だよ。豪樹君と烈矢君はコース取りが似てるからこそ、訓練すれば、二台のスリップストリームを生み出しやすくなる。二郎丸君は力強さでその不安定さをカバーできる。その時、君達二人の役割は?これまでとは変わって来るよね?」 豪は、そんなことを今まで考えたことも無かった。 つまり、今の状況を変えるには それを改善する為には―― 「新しいのに」 「そうだ。今まで学習したことは消えてしまうかもしれないが、チームメンバーも変わったのだし、心機一転して新しく学習しなおした方がいいかもしれない」 GPチップは走りを記憶する。人間の脳みたいなものだ。 それを、代える? 今までの記憶を、走りを、捨てて? 「豪君?」 「あっと……」 「どうする?実は既に君達の分の新しいGPチップも用意を進めているんだ。早ければ次の」 「ちょっと考えさせてくんねーかな?」 「ええ?!」 土屋博士の意外そうな顔が、おれを更に残念な気持ちにさせた。 「豪君。今のチームと前のチームは違うんだと言う事だけ、覚えていてくれ」 悲しそうな顔をする土屋博士に、おれは何ともいえない、複雑な顔しか返せなかった。 ******** 「ミハエル君!今ゴール!!続いて1・2・3・4位独走!勝ったのはアイゼンヴォルフ!!」 敵情視察と称して、気分転換に他のチームの走りでも見に行くかとレース会場に足を向けてみれば。 「よりにもよって何でアイゼンヴォルフなんだよ」 勝利のチェッカーフラッグが振られ、一際高い歓声が上がる。 そんな雰囲気の中、豪は不貞腐れた気分で最も高い位置の表彰台に上がるミハエルを苦々しく見下ろした 自分達以上に、ミハエル以外メンバーを総入れ替えしたにも関わらず、相変わらず連勝を続けるドイツチーム。 はっきり言って、今は気分的にあまり会いたくない。 長居せずさっさと帰ろうと立ち上がった豪だったが。 「豪、なんか真ん中のヤツ、手ぇ振ってるみたいだぞ」 見てみると確かにこちらに向かって手を振っているように見えなくもない。 しかし目立つところにいるミハエルと違って、こっちは観戦席の一番上である。 正直言って、向こうが本当に自分達とわかって手を振ってるとは思いがたい。 従って。 「無視しろ、無視」 捕まったら厄介だ。だからこそ早く去ろうと思っているのに。 「ちょっとゴーくん?僕が呼んでるのにまさか尻尾巻いて逃げる気じゃないよねぇ!!」 「何か名指しされてるぞ、豪」 とんでもない距離からでも、ミハエル様には関係ないらしい。 衆人環視の視線を一身に受け、豪は今度こそ観念して再度その場に座りなおした。 「やぁゴー君、応援に来てくれたの?」 「バカヤロー、んなわけねーだろ!」 「敵情視察でゲスよ」 「へー」 意味ありげにミハエルが豪へと視線を向ける。 「何だよ?」 「豪君でもそんなことするんだね」 「お前おれをバカにしてんのか?」 「え、何で?感心してるのに」 これを本気で言っているのだから恐れ入る。 「相変わらずマイペースすぎるダス」 「そっちの二人は?」 「一文字豪樹だ!」 「……烈矢」 「僕はミハエル。よろしくね!で、皆これから暇?」 また唐突な。 「んなわけねーだろ」 これから帰ってすぐチームランニングの特訓予定だ。 「暇だね?」 「だから違うって」 「僕ん家のディナーに招待するってもう決めた。言っとくけど豪華だよ?」 「フルコース……」 既に烈矢はフラフラとミハエルに吸い寄せられている。 「おい烈矢。釣られてんなよ」 それを豪樹が兄の威厳で引きとめようとするが。 「よかったらレシピも用意させるよ」 「フルコースのレシピ……」 豪樹も敢え無く陥落した。 恐るべし、ミハエル。 名前は覚えていなくても、その人物を釣る為のポイントだけはしっかりと抑えているのである。 「全くしょうのない奴らだな」 豪もまたリーダーの貫禄で堪えようとしたが。 「豪君は来ないの?三大珍味も出るよ?」 「食ったらすぐ帰るからな」 駄目だった。 「ちょっ、豪君!特訓はどうなったんでゲス?!」 「帰ったらやるって」 豪の心は完璧に三大珍味に囚われていた。 「二郎丸君もなんとか言うでゲス!」 「え?何がダスか?」 そして二郎丸は既に釣られた後だった。 既に一行の先頭に立っていた二郎丸の姿に、藤吉は兄リョウの姿を垣間見た。 「こんなところまで似て欲しくなかったでゲス」 ただ一人になった藤吉は「ま、本当の気分転換にはなるかもしれないでゲスな」と無理やり自分を納得させ、渋々その後に続くしかなかった。 ******** 「何だかこの部屋割りに、意図的な何かを感じるでゲス」 「何わけわかんないこと言ってんだよ」 食事ができるまで、と案内された部屋はと言うと、豪樹と烈矢が一緒の相部屋。 そして豪、藤吉、二郎丸が同じ一室。 普段、一人部屋以外の発想がないミハエルが敢えて相部屋を指定してくることが、藤吉には怪しく思えて仕方がなかった。 「まぁ、さすがに盗聴器まではないと思いたいでゲスが」 何をブツブツ言ってんだ? 豪には藤吉の独り言の意味がよくわからない。 「何でもないでゲス。それより豪君」 「何だよ?」 「次の試合が迫ってきてるでゲス。悠長にしてる時間もあまりないでゲスし、もし作戦なんかが決まってるんなら話してほしいでゲス」 「おー、まかせろって」 豪は得意げに自らが考えた作戦を話し始めた。 しかし五分後には、藤吉が早々にその案に却下を下した。 「何でだよ?!」 「豪君と二郎丸君が先頭を引っ張って、カーブではワテと烈矢君が、豪樹君が全体をサポートする作戦でゲスって?」 「そう」 「んなのあの二人が納得するわけないでゲショ!」 「納得させる!」 はぁ 藤吉が一度大きく溜息をつき、嗜めるように言葉を続けた。 「豪君は前提を間違ってるでゲス。二郎丸君の性能はトライダガーと似てるでゲスが、豪樹君と烈矢君は共にスピード重視の高速型。究極のエアロマシンとは言っても、烈君やJ君の代わりをさせるのは全くバカな話でゲス」 「バカとは何だよ!」 「バカはバカでゲス!前と同じになんてできるわけないでゲショーが!!」 コーナリングの烈、万能型のJ。 あの二人は常に己の個性で突出しがちな日本チームの走りを支える、要の役割を果たしていた。 ある意味あの頃は、特性が綺麗に分かれすぎていたことが、最終的に良い結果を生み出していたのかもしれない。 しかし今は、それとは全く違う。 「今のチームはバランスが取れているとは言いがたいでゲス」 「それはあいつらや二郎丸がチームランニングに慣れてねーから」 「それをお前が言う資格はないダス!大体、最初のレースで真っ先にチームランニングを乱したのはお前じゃないダスか!」 「あれは!あんまりにもバラついて揃わねーからだろ!あんなんじゃスリップストリームも生まれねーし、あのまま走っても勝てないと思ったから仕方なく」 「だったら作戦変更の合図くらい出すでゲスよ!」 「そうダス!勝手に突っ走るんじゃあ結局前と何も変わらないダス!」 「何だと!」 「とにかく!このままじゃ駄目でゲス。このチームでもできる型のチームランニングを考えないと同じことを続けても堂々巡りでゲス」 とは言え、それが思いつくようなら苦労はしない。問題に誰も明確な解答をもたらすことができず、沈黙が場を支配する。 「真面目野郎に、相談してみたらダメなんダスか…?」 二郎丸がポツリともらした。 「それはいい考えでゲス!」 昔のビクトリーズで、烈は同じことで悩んでいたという告白を、藤吉は烈当人から聞いていた。 だからそこにかつて何らかの回答を見出した烈なら、と藤吉は即座に同意を示した。 「烈君ならきっと何かいいアイディアを」 「烈兄貴には絶対言うな!」 「どうして……」 しかしそれは豪の叫びによって遮られた。 「兄貴はもう引退したんだぞ!言ったら絶対、許さねえ!!」 「お前に任せる。大丈夫だな?」 「兄貴はおれを信じて任せてくれたんだ。今更んなみっともないことできるかよ!!」 豪の叫びは悲痛で、二人はそのことについてそれ以上言い募ることができなかった。 「けど、それなら、どうするんダス?」 「本当は、博士から提案されてることがあるんだ…」 「それを早く言うでゲスよ!豪君!!」 気まずい空気をなんとかしたい気持ちもあって、藤吉が勢い込んで尋ねた。 「おれと藤吉のGPチップを代えるんだ」 「え?」 「おれと藤吉のGPチップは前のビクトリーズの走りを記憶しすぎてるから、新しいチームの走りに馴染めないんだって博士が言ってる。スムーズにするには、それしかないって」 「じゃあなんで早くそうしないんダスか?」 「…………」 藤吉が沈黙する。 どうやら藤吉には、豪が何を思っているかわかるようだった。 「二郎丸。お前は簡単に言うけどな、今までおれたちビクトリーズは、このGPチップで全部の戦いを乗り切ってきたんだ。それをちょっと勝てないから代えてもいいってのが、納得できねえんだよ」 それを言われると、今回よりの参加である二郎丸も二の句を紡げない。 「お前はどう思うんだよ、藤吉?」 「ワテは……」 藤吉はしばし言い淀んだ後、しかし次の瞬間には顔を上げてきっぱりと言い切った。 「正直代えてもいいと思ってるでゲス」 「藤吉……」 第一回からずっと同じチームで走ってきた同士の、まさかの答えに豪は呆然とした。 「もちろん、今までの走りに愛着がないわけはないでゲス。でもだからこそ、代えるべきだと思ったんでゲス」 「けど」 「わかってほしいでゲス、豪君。ワテらは、今のビクトリーズは、前のビクトリーズとは別物なんでゲス!」 どうしてなんだ、どうして誰もわかってくれないんだ。 「お前もなのか……」 豪は裏切られた気分で、何も言えずその場に立ち尽くした。 「どーしたの、何か揉め事ー?」 出た。 「何でもないダス!ちょっとウンコ野郎が腹減ったってうるさく騒いだだけダス!!」 「そうでゲス!もう13才にもなるのに、いい加減分別をもつでゲス!と注意してたところでゲス」 「お、お前ら」 あまりの言い草に、先ほどの出来事も忘れ、豪の顔が若干引きつった。 「断じて他には何もないダス!」 「そう、ミハエル君が興味を持つような話題は全くないでゲス!」 「ふーん」 「ま、いいけど」 ほっ この小さな王様に一度でも、興味を持たれようものなら、その旺盛な好奇心を満たすまでどこまでもどこまでも追求の手を伸ばしてくる。 恐ろしく厄介な人間なのだ。 そんなミハエルにまで関わられたら、ややこしい話が更に拗れてしまう。 藤吉と二郎丸は密かに安堵の溜息をもらした。 「夕飯、できたから呼びにきたんだけど」 「本当ダスか!」 「いやぁ楽しみでゲスなぁ」 少々態とらしすぎる、過剰な反応を示す二人を見て、ミハエルも満足げに頷いた。 「ま、そんなに楽しみにしててもらえたんなら光栄だよ」 ガシッ 「へ?」 「すっごくお腹空いてるんでしょ?早速フルコースを見に行こうよ。ゴーキとレツヤは先に行ってもらったから」 にっこり 笑顔で笑った次の瞬間には、ミハエルはもう豪の腕を掴んで全力で走り出していた。 「ミハエル!!っちょっ、待っっ…うあああああ!!!」 藤吉と二郎丸がミハエルの突然の暴挙に呆然としてる間に、二人の姿は部屋から消えていた。 「はっ!ウンコ野郎が浚われたダス!」 「ミハエル君、豪君を返すでゲスー!!」 やっぱり興味持たれてた―――っっ!!! 二人はすぐに後を追って飛び出したが、少し前のミハエルの発言を思い返しハタと止まった。 「二郎丸君、さっきミハエル君は何て言ってたでゲス?」 「聞き間違いじゃなきゃ、一文字兄弟に先に行ってもらったって言ったダス」 ダダダダダッッ 二人は隣の部屋に駆け込んだが。 「ああ、やっぱりいないでゲス!」 「遅かったダスー!!」 一文字兄弟の最大の欠点。 二人とも、極度の方向音痴。 ただでさえ城の構造とは複雑なもので、一般人でも迷いやすいというのに。 あの二人が勝手に出歩いて、しかもミハエルの城で、絶対無事に辿り着けるはずがない。 「遭難、してるかもしれないダス」 「とりあえず次の試合までには見つけ出すでゲス!!」 そうして二人はミハエルに追いつくどころか、使用人たちによって保護された一文字兄弟と出会うまで、小一時間ほど城を彷徨い歩くこととなった。 一方、豪たちはと言うと。 「ね、豪君」 「何だよ」 「さっき何で揉めてたの?」 「お前には関係ねーことだよ」 「あるよ」 「どこがだよ」 「だって何、あの走り?」 日本チームは、他のチームと比べて元々それぞれのマシンの特性が強すぎる。 なので日本の走りは他と比べ、好・不調の波が大きいのは以前からで、コースや選手のコンディションで簡単に調子が変わるのもよくあることだった。 連敗が続いても「またか」と、意外にも周りからはさほど疑問は持たれていなかった。 だから「おかしい」と気付いているのは、チーム内部だけだと豪は無意識に思っていたのに。 どうやらミハエルはとっくに、今の日本チームに流れる不協和音を見抜いていたらしい。 「豪君、楽しみにしてたんだから僕をがっかりさせるような走りはしないでよね」 「わかってら」 「わかってない」 「わかってる」 「だってバラバラじゃないか」 何も知らないくせに。 痛いところを平気で突いて来るミハエルの無神経な物言いに、カチンと来た豪は思わず怒鳴り散らした。 「悪かったな!日本チームはいつだってバラバラの走りだっての!!」 「違う。心がだよ」 ! 帰ってきたのは、予想外の言葉だった。 「豪君本当にわかってる?今のチームは前のチームとは違うんだよ」 土屋博士にも藤吉にも言われた言葉だ。 そんなことはわかってる、わかってるけど。 「今のビクトリーズの走り。すっごくつまんない」 耳に痛すぎる。 「アメリカの次は僕達とだ」 「負けるもんか!!」といつものように啖呵を切ろうとした。 だが。 「くだらない走りをしたら承知しないよ」 ゴクリ ミハエルと眼が合った。 それだけで、言葉を失っていた。 鉄の狼。 豪はこのとき初めて、見たことも無い生き物の本質を知った気がした。 「ま、それはさて置き!!」 しかし硬質な空気は、それを作り出した人物によってあっさり消え去った。 「料理、楽しんでってねvv」 次の瞬間にはもういつも通りのミハエルだった。 機嫌よく口笛を吹くミハエルの後姿に、思わずといった感じで、珍しく頼りなさげな豪の声が投げかけれれる。 「おれは、どうしたらいい?」 「それは僕には答えられないよ」 だってライバルだもん。 ミハエルの答えは仁部もないものだった。 そう。訊く相手は、他にいる。 そんなこと、自分だってもうわかっている。 だけど今更になってしまって、きっかけが掴めないのだ。 「もっと仲間を信じなよ」 近い内に、やってくると思うよ。チャンス。 ミハエルはいやに訳知り顔で、一つウインクを遣した。 そして数日後、その予言通り、頼もしき仲間達の手で、チャンスは齎されたのである。 |
| to be continue… |
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烈のところではブレットが頑張ってくれたので、豪のところではミハエルに頑張ってもらいました。やはりミハエル様は最強、恐るべし。 藤吉や二郎丸は結構苦労性。どちらかと言うと二人とも真面目ですからねぇ。しかし豪樹と烈矢は影が薄い…いや出したいんですけど、やっぱりキャラがわからない。。 |