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あー、そう来たか |
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++八方塞ですか++
ハナはえっちらおっちら山登り。おかげで楽に頂上到達。視線を遠く眺めやれば、あれまぁ、びっくり。 周りは…………海。 どうやら今自分がいるのは孤島らしかった。しかも四方をぐるりと見下ろしてみても、見えるのは海岸、湖、森ばかりである。しかも、 ははははは、集落どころか船らしきものも見当たらないね! 遠眼鏡を覗き、海岸一体を探してみたが、それらしきものは影も形もない。 はははははははは、もしかして脱出不可能とか! どこまでも続くかに見える水平線には一切の乱れもない。つまり近くには島も大陸もありそうにないということだ。 はははははははははは……何の冗談にもならないよ。 「疾風の紋章使用不可でテレポートもできない僕に、どうやって帰れって言うのさ……」 愚痴を零しても助けが来るわけではないが、呟かずにはいられないだろう。例え聞いてくれるのが人間でなく、動物?だけだったとしても。 まぁ、いつまでも突っ立っていても仕方がない。依然としてここがどこかはわからないままだが、とにかく簡単に帰れそうにないことだけはわかった。 ならば次にすべきことと言ったらあれしかない。 衣・食・住。これの確保だ。 衣。これは幸い荷物を持っているのでしばらくは大丈夫。 食。道中色々と生き物を見かけた。棍も背にあるのでモンスターでも動物でも狩ればいい。あ、ハナ。そんな怯えないでよ。別にお前は狩ったりしないって。 住。これが一番の難関だ。一応逸れたとき用に毛布や一人用の簡易テントは持っているが、雨の日などはそれだけでは心許無い。 「……ハナ。お前はこの辺りで暮らしてるんだよね」 シュラは意味深に傍らに立つハナに視線を移した。何となく一歩退くハナ。 「だから何で逃げるの。狩らないって言ってるじゃないか。……普段は野宿かもしれないけど、悪天候のときはやっぱりどこかに非難してるよね」 シュラはそこで極上の笑顔をハナに向ける。 「ハナ、僕達はもう友達だよね。一蓮托生だよね。だから、そこに僕も連れてって」 語尾にハートマークでも付きそうな愛らしさだ。ハナは何か人生諦めたように項垂れた。それは多分敵わないものには逆らってはならないという動物の本能が働いたからだろう。全く持って正しい判断だ。 そしてハナは再びその背にシュラを乗せ、山を降りていった。 連れてこられた先にあったのはハナがぎりぎり入れるくらいの大きさの洞窟。カーブしているため風が吹き込みにくそうだ。 シュラは枝分かれしている道の内の一本を選び奥へと進む。そこは行き止まりになっていたが、中は結構な広さがあり、見上げた頭上から微かにだが風を感じた。どうやら一部上に吹き抜けになっているようだ。これなら火を燃やしても中毒になることもあるまい。 それを決定打にシュラは洞窟の、取り分けその広場を住居へと定めることにした。 「ハナ、すごいよ。本当ありがとう!…じゃあ次は、水か」 それには心当たりがある。ここに辿り着く途中に湖を見かけた。それはトラン湖やデュナン湖とは比べるべくもないが、一般的な大きさの湖。透明感があり、魚も泳いでいる。 「解決!……と言いたいところだけど、ちょっと遠すぎるんだよなぁ」 シュラの足なら別にそんなに時間も掛からないだろうが、何かにつけて必要な水を一々運ぶのはかなり面倒だ。 水の紋章があれば楽なんだけど。 シュラは心の中でぼやいたが、無いもの強請りしても仕方がない(あっても使えるかはわからないが)無いものは無いのだからあるもので解決しなければ。 あの湖には流れ込む上流がなかった。つまり地下に水脈があり、それが漏れ出ているのだろう。この島に点在する湖の位置関係から考えると、おそらくこの辺りにもその地下水脈が通っているはず。 シュラは棍筒に仕込まれた針金を二本取り出し直角に曲げると、それを一本づつ両手に握り締めた。 不思議そうに首を傾げているハナを尻目にシュラは辺りをウロウロと徘徊し始めた。 徘徊することしばらく。一箇所で二本の針金が不自然に左右に広がった。 ここか。 シュラは針金を置く。ハナを呼び、土を蹴り出してもらい、穴を掘る。シュラ一人が入れるくらいの大きさになったところでストップ。ハナを遠ざけ、深呼吸。 「ドリャアアアアッッ!!!」 ドゴォォォォッッ 棍を思いっきり縦に振り下ろし、地面に突き立てた。 見た目は何の変化も無い。 シュラは即座に棍を抜き取り、その場を飛びのく。 ピシッ、ピシピシピシピシッッ。 やがて地の底からひびが走るような音がしたその次の瞬間、水が噴き出した。あっという間に小さいが確かな池が誕生した。 アキ直伝。THE☆ダウンジング。 「これで水も確保完了っと」 シュラは満足げに頷いた。が、基本完璧主義な彼はもちろんそれだけは終わらなかった。 その場で360度視線を巡らせると今度は一本の青々とした大きな木に目を止めた。その下に落ちている葉を一枚拾い上げ、感触を確かめる。 まあまあ大きく、柔らかそうだ。 シュラは荷を降ろして木に飛びつくと、するすると身軽に木登りを始めた。真ん中辺りまで登り、枝の方へと移動する。再び深呼吸。 「ドォッセイッッ!!!」 バキィィィィッッ 棍を大きく振りかぶり、葉がたわわとなっている太い枝を根元から叩き落とした。 エン直伝。日曜大工、資源は現地調達で。 「よし、後はこれに毛布を巻きつけてベッドに改造して……」 こうしてシュラは住居空間の更なる向上を目指し、着々と作業を進めていった。 途中、その洞窟の別の枝分かれ先には熊や蝙蝠に似たモンスターのような生き物が住んでいることが発覚したが、居住権についてはシュラの人徳と棍と眼力によって丁重にご理解頂いた。動物というのは本当に素直で助かる。 シュラはそれから狩り、採取、散策の日々を繰り返した。しかし一週間程して、兼ねてからあった不安要素が現実のものであることを確信する。 人が、いない。 もしかして、無人島?? 文明の気配も全く発見できない中、イコール紋章問題解決の目処も付かないのでは、自分はどうやって帰ればいいのだろうか? …………………………ま、いっか。 焦らなくても、自分には幾らでも時間がある。人がいなければソウルイーターの心配も減る。それに、 慣れればこの暮らしも意外と快適だしね。 恐るべし無人島ループ。かつてアキも陥った罠に見事に嵌るシュラであった。 |
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坊ちゃんはタフな生き物になりました。元々あんな世界で旅暮らしですから、今更一人でサバイバル生活になっても大して変わりはないようです。しかし坊ちゃん、動物?虐待はいけませんよ。次はいよいよ出会います←遅っっ! |