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ふむ、急展開 |
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++人、いたよ++
うーん、やっぱり久々の我が家は良いなぁ。 天井から微かに降り注ぐ光にシュラは眠い目を擦りながらゆっくりと寝床から身を起こした。 朝起きたらまず洗顔、そして歯磨き。これは貴族時代からの習慣だ。水がないときはさすがに諦めるが。ちなみに歯ブラシは自作だ。腰につけている大振りのナイフで柔らかい木を削って作る。もちろん衛生面を考慮して元の世界にいたときから定期的に作り変えている。そして唯一の小さな鍋に水を入れて火にかける。 マクドール邸とは比べるべくもないが、住めば都とはよく言ったものである。食料には困らないし、気候も安定しているし、それほど危険なモンスターもいない、なんて過ごしやすい場所なのだろう。 シュラはしっかりサバイバル生活に馴染んでいた。 あれから三週間。目覚めの際の一言からわかるように、彼は暫くの間自作のマイホームを留守にしていた。もちろん現状把握のための手掛かり探索の旅に出ていたのである。別に困らないとは言っても、やはりそのくらいは知っておきたい。 しかし成果の方は決して芳しくなかった。島の周りは一通り周り、中心の森の方にも踏み込んでみたのだが、ある程度進んだところで、大きな谷に行き当たってしまった。さすがに飛び越えられる距離でもなかったので、結局その先に進むことは断念せざる終えなかった。 でも、やっぱり何かあるとしたらあそこだと思うんだけどなぁ。 向こう側は靄のようなものに覆われていて、奥がよく見えなかったのだが、あの靄。あれは怪しい。 こちら側は全く晴れ渡っているのに、あちらだけ霧が掛かっているなど明らかに不自然だ。あれではまるで谷を境にして結界でも張られているようではないか。 今のところ引っかかるのはそこくらいで、後は呆れるくらい普通の、無人島だ。 と言いたいところだが、もう一つだけ、おかしなことが発覚していた。 札が、使えない。 いや、も、と言った方がいいだろう。額の蒼き門の紋章も使えなかった。まぁこれは疾風の紋章の例もあるし予想はしていた。 しかし札は盲点だった。『静かなる湖』は人の魔力を打ち消す呪文で、札が使えなくなることはないから、無意識の内に札は使えると思っていた。 火を付けるのを不精して札を使おうとしたが、駄目だった。発動のはの字もなかった。 札の使用も封じる結界というのが全くないとは言わないが、かなり高度な技である。それがこんな辺境の無人島に存在するというのはどうにも解せないのだが。 はっ、お湯が!! 悩んでいる間にお湯が吹き零れている。早く具を用意しなければ。 いそいそと朝食の準備を始めたシュラの頭からは不信な森や結界のことなどすっかり吹き飛んでいた。 ふぅ。 朝食を終え、果物ジュース(制作方法は握り潰して搾り出すというあれだ)を飲んで人心地つく。 何か物足りない気がする。一瞬後に思い至った。 そういえば、ハナを見かけないなぁ。 別に家にいたときも四六時中一緒にいたわけでもないが、寝るときは何故かいつもこの洞窟にやって来ていた。朝になると昨日溜め込んだ果物なんかを一緒に食べたりしていたのだが、昨夜は姿を見ていない。 まあ、元々野生の生き物なのだから、いつまでもここにいる方がおかしいのかもしれない。少し寂しいけれど、先に長期で家を空けたのは自分の方なのだし、文句を言うわけにもいくまい。 ――――――――ッ 今、何か声が聞こえたような。気のせいだろうか?そうでなくても、モンスターの鳴き声か何かだろう。この間もでかい蛇型モンスターが海でやたら不機嫌に暴れていたし。 興味を失い、朝食の片付けに戻ろうとしたシュラだったが、次の声は無視できる類のものではなかった。 パパ――――っっ 今度は確かに聞こえた。パ、パ?パパぁ??これは幾らなんでも鳴き声ではない。人間の声に間違いない。お父さん限定みたいだが、多分、助けを求めたもののような気がする。響きがそんな感じだ。 ごめん、アキ!後片付けは後できちんとするから!! 食べたらすぐに片付けるように、と口を酸っぱくして言っていた記憶の中のアキの姿に謝罪しつつ棍を握り締め、声の方へと全速力で駆け出した。 「食べたかったら私を食べなさい!」 人いるんじゃないか。駆けつけた場所はいつぞや目をつけた湖。しかも傍の大木の上の方に家らしきものができている。 ええー?いつの間に?? 最初に見かけたときはそんなものなかったのに、って驚いている場合ではない。大トカゲみたいなのに自分と見た目同じくらいの女の子が襲われかけている。庇うその背後にはもう少し幼そうな眼鏡をかけた男の子もいる。 うわ、大ピンチだ。 助けるか、と思ったそのとき、一人の黒服の少年が駆けていくのに気付いた。手には槍がある。 それを見たシュラは投げつけようとした棍を背に収める。少年が槍を勢い良く振りかぶった。が、焦ったのか軌道が少しずれている。 即座に懐から薄型ナイフを取り出し、手首を反す。 ヒュッッ ナイフが当たり、槍の軌道が少しずれる。 ギィヤアアアアアアッッッ 大トカゲはその大きな悲鳴を最後に動きを止めた。槍は貫通したようだ。絶命は免れないだろう。 「ありがとう」 メガネ君(仮名)を庇っていた少女がブラック君(仮名)に駆け寄る。木の上にいたメンバーも次々に降りてきて三人を取り囲む。 本当は近寄って行って事情を聞きたいんだけど、なんだか大団円的感じでそんな雰囲気ではなさそうだ。 家がわかったんだし、また今度でもいっか。 せっかく友好を深め合っているようだし、部外者が水を差すのも悪い。 ブラック君(しつこいが仮名)はナイフが当たったことに反応したようだから、もしかしたら僕の存在に気付いたかもしれないが、そのくらいで恩に着せるつもりはないしね。 次はもっと落ち着いた頃に改めて訪ねるとしよう。何か情報を得られれば良いけど。 無事を喜び合う少年少女達に微笑ましいものを感じつつ、シュラはその場を静かに去っていった。 でもあの悲鳴を上げたのは一体誰だったのだろうか?見たところそんなことを言いそうなほど幼い子どもはいなかった気がするのだが。 |
| to be continue… |
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会えませんでした…ごめんなさいぃぃ!!でも一応出たのは出ました。有名な「パパ――っ!」の台詞が←そこ?! |