予想外の展開だ





++アナタ何人デスカ?++





 とりあえずみんなの家に帰った六人と一匹はいまだ意識の戻らないハワードをベッドへ運ぶ。
 そして僕は手作りらしいテーブルの席へと誘われた。
 とにかく席に着く。
 沈黙。
 気まずい。
 なんだか重要な初対面がアレで、お互い出鼻を挫かれた形になってしまった今、何をどう切り出せばいいのやら会話の糸口が掴めない。
 しかしこのままでは何時までも沈黙地獄から抜け出せない。
 よし。気合を入れ、仕切りなおす。初対面、僕達は今が初対面。初対面と言ったらまずはアレだよ。
「僕はシュラと言うんだ。君達の名前も訊いて構わないかな?」
 笑顔で自己紹介。これが基本だ。
「私はルナよ」
 セミロングの茶色の髪の毛をした女の子がすぐに友好的な笑顔で返事を返してくれた。
 よかった。どうやら悪印象をもたれているわけではないみたいだ。
 それでとりあえず場が和んだ。
 見届けた他の子達も口々に名乗りを上げ始める。
「メノリだ」
「チャコや」
「僕はシンゴ」
「シャアラよ」
「俺はベル。君が最初に会ったのはハワードと言うんだ」
「…カオル」
 一人一人に「よろしく」と頭を下げながらさり気に全体像を観察する。
 うーん、改めて見るとなんだか皆変わった格好をしてるなぁ。この辺の民族衣装か何かだろうか?
 僕のもの言いたげな視線が伝わったのだろうか、一番メンバーの中で気の強そうな(最初の印象だけで判断するのは失礼かもしれないが)女の子、メノリが早速本題を突いてきた。
「ああっと、シュラ。まずは尋ねたい。貴方はここの人間なのだろうか?」
 まぁそうくるよね。
「ううん。僕は三週間くらい前に事故でここに来ちゃった余所者」
 そう答えた瞬間六人と一匹の表情が一気に落胆の色に染まった。
 あ、嫌な予感。
「あなたも遭難者だったの……」
 も、も?も?ってことは
「もしや君達も」
「遭難者だ」
 ああ、やっぱりね。なんとなくそんな気はしてましたよ。前からね。子どもばっかりで大人がいなかったし、家ができたのもつい最近みたいだったし。
 わかってはいたけはっきり事実として言葉にされると…さすがにへこむ。
「そっかぁ。ということは当然そっちも脱出方法はないわけだよね」
 諦めきれないのかメガネを掛けたシンゴ少年が確認してきた。
「ごめん、ない。こっちも同じこと期待して人を探してたところなんだ」
 お互い空振り、振り出しに戻るってやつか。でも向こうの方はもっとダメージが大きそうだ。もしかしなくても僕の存在にかなり希望を抱いていたらしい。
 再び気まずい空気が辺りを包む。
 しかしそう盛大にへこまれるとこっちとしてもどうしたらいいのかわからなくなるんですけども。
「ああー、もう!いつまでもウジウジと!そないな陰気臭い顔ばっかり並べとっても何にもならへんやろ!シャキッとせぇ!シャキッと!」
 そうそう、良いこと言うなぁ。ピンクの猫。……ん?そういえばこの猫なんでしゃべってるんだろう?二足歩行だし。
 あ、そうか。ネコボルトか。久々に見たからわからなかったよ。なんだか大きさが少し小さいような気がしたんだけど、嫌だなぁ。もう年かな?
「そうね、お客さんの前で失礼よね。御免なさい。シュラ。あなただって同じ気持ちでしょうに」
 あ、良い子だ。この子。ここのとこ傍にいるのは一癖も二癖もあるような連中ばっかりだったから、性格の曲がってない子を見るとほっとするよ。
「いやいや。僕は逆境にはなれてるからこのくらい全然大丈夫だよ」
 なにせ若いときから色々あったからね。
「シュラは意外と逞しいのだな。我々も見習わねばならんな」
「確かに。落ち込むより前向きに考えるべきだ。同じ目的を持つ協力者が増えたのは歓迎すべきことだし」
 おお、ベル君。君は一番大きいだけあって考えが大人だね。そうそう。協力者が増えるのは良い事良い事。
「そうよね。仲間が増えるのは素敵なことだわ」
「そう言えば我々はまだお互いの素性も訊いていなかったな」
「ねぇシュラ。あなたはどこから来たの?どこ出身?」
 どこから来たかと言われるとあちこちふらついてたから何とも言えないけどどこ出身かと訊かれたら。
「トラン共和国」
「トランキョウワコク?」
 え?何その?って顔。もしかして知らないのかな?結構有名な大国なんだけど。
「もしかして国名を言ってるんじゃないのか?」
「あ、共和国か!でも聞いたことないなぁ」
「ウチのデータにもあらへんなぁ」
「ねぇシュラ。国じゃなくてあなたの生まれた星を教えてもらえる?」
「ホシ?」
 今度は僕が首を傾げた。ホシ、星か?でも出身の話で何故星の話?
「僕の星って天魁星とかそういうことではないよね?」
「テンカイセイ?聞いたことある?ベル?」
「いいや。少なくても俺たちの近くにある星ではないんじゃないかな?」
「ということはあなたは地球人じゃないのかしら?」
「は?チキュウ人?それ何??」
 んん?なんだか話が噛み合ってない気がする。
「え?君のところには出身惑星の名前をとって何々人とか呼ぶ習慣はないの?」
 出身ワクセイ?聞き覚えのない言葉だ。変換ができない。
「それって生まれ故郷の民族とかそういうことを訊いてるの?」
「民族というかもっと大きな……」
「私たちはロカA2というコロニー出身なの。シュラは聞いたことないかしら?」
 ろ、ロカエイツー?ころにー??
「ちょ、ちょっと待って!話がよくわからない。ワクセイとかコロニーとか一体何?」
「え、コロニーはともかく惑星も知らないのか?」
「呼び方が違うんじゃないかな?君の言う星っていうのは空に無数に輝く光のことだよね?」
「うん」
「惑星っちゅーのはその中でも人が住める環境を持っている星のことを言うんや」
 はい?
「人が住める星って…それはもしかして君達や僕はあの空の星のどれかに住んでるって言いたいの?」
「?そうよ?今私達がいるここだってその星の一つでしょう?シュラが住んでるのはテンカイ星という星なんじゃないの?」
「ええと、天魁星っていうのは僕の背負う宿業の星で故郷の話とは関係なかったから忘れて」
「ちょっと待って。シュラ。君のところではもしかして世界がどんな形をしてるかとか解明されてなかったりしない?」
「え?世界の形?それは球体なんじゃないの?」
 円形説はずっと昔からあった。それは世界地図が完成してからは揺ぎ無い事実として認められている。世界中を地図に表してみせると日々頑張っていた仲間の顔を思い出す。
 結局彼一代でそれは完成することはなかったが、その書きかけの地図は子孫、弟子に受け継がれ三代目でついに完成の日の目を見た。僕もその地図をいつもあり難く使わせていただいている。
「その球体のことは何て呼んでるんや?」
「世界は世界でしょ?」
「じゃあその球体の外はどうなってるかわかってる?」
 どうって……
「世界の外側には異世界が広がってるんじゃないの?」
「宇宙の概念はまだ発見されてないのか?」
「ウチュウ?」
「空のことだ」
「空は空じゃないの?」
「いや、それはそうなんだけど」
 もう大混乱だ。
「空イコール宇宙、世界イコール星と考えろ。お前の住んでいる世界もその宇宙に浮かんでいるんだ。宇宙に多くある星の一つということだ」
 今まで黙って僕達の話を聞いていたカオル少年が混乱する僕達の話をまとめてれた。
 ええっと。まだ色々よくわからないんですけど。
「君達は異世界から来たってこと?」
「異世界人というか異星人だろうな。ここの生き物から見れば。お前もそうじゃないのか?」
「でもシュラの元々の考えから言えばこの島の住人じゃないけどこの星の住人ではあるってことにならない?」
 え?
 僕はそもそもテレポートでここに来た。普通に考えればいつも通り場所を移動しただけでここは僕の住む世界ということになるのだろう。
 しかし考えてみればやはり変だ。僕は力が使えないのは結界の中にいるからだと思っていた。
 でも力が使えないのは仕方がないかもしれないが、この三週間、魔法らしき波動も揺らぎも全く一切何も感じられないというのはやはり不自然だ。
 そもそも結界というのは基本外界の力を拒むものだ。けれど僕は今回何の抵抗もなくここへ飛ばされてきた。
 それは結界の中に無理やり入り込んだというより、拒む力の無い空間にできた歪みに、偶々ビッキーのテレポートの力が入り込んでしまったと考えた方がしっくりくる。
 ということは紋章や札が使えないのは力が打ち消されているからではなく、元々その要素の源がここには存在しないからなのか!
「ごめん。やっぱり僕も異世界人、異星人かも」
 尽きることのないお互いへの疑問は中々晴れることなく、話し合いは平行線のままハワードが目覚める日暮れまで続いたのだった。





to be continue…

ハワードは前回出張ったので一回お休みです。だってただでさえわけわかんない説明のときに奴がいたらさらにややこしくなるから(笑)坊ちゃん珍しく大混乱。



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